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人が作る環境とアカトンボ

f0141191_15592078.jpg収穫の秋を迎えて、最近意識してある場所の前をよく通ります。それは家から少し離れた場所にある「田んぼ」。なぜ気になるかというと「アカトンボ」を見るためです。


※実際には、「アカトンボ」という名前のトンボは存在せず、トンボ科アカネ属のトンボを総称して、俗にアカトンボと呼ぶようです。



その「アカトンボ」(アカネ属)の代表的な種に「アキアカネ」というトンボがいます。アキアカネは日本の「稲作のサイクル」に最も適応してきた種のひとつで、逆にビオトープのような「自然度が高く、安定した環境」では生息しにくい種です。つまり「人の手が入り、攪乱された環境」に適応して生息しています。

田んぼは、「人工的な水辺環境」ですが、かつては多くの生物の生息環境にもなっていました。日本は「稲作の国」、つまり「田んぼの国」で、田んぼがこの国の多くの環境や風景を形成してきたとも言えます。空港の離着陸の際に、飛行機から地上を見下ろすと、田んぼが、「グリッド状のパターン」を形成していて、「人の生活が作り出した美しい風景」を見る事ができます。


そうした、日本の環境に最も適応してきた種のひとつが「アキアカネ」です。アキアカネは「日本人の生活環境」に見事に適応し、そういう意味では、日本の風土における「共生のシンボル種」であるとも言えそうです。

そしてこの季節はアキアカネの産卵の季節で、私たちが子供の頃は、群れになって空を舞う姿が見られた事を、今でもよく憶えています。現在でも、産卵のために田んぼを訪れるアキアカネの群れが見られるのだろうか。。。と思って、このところ田んぼを観察している、という事なんです。

結果は。。。正式に調査をしたわけではないのですが、数頭、雄雌がつながったままの「打水産卵」が見られた日が数日あったのみで(下の写真)、一頭も見られない日の方が圧倒的に多かったです。まだこれからなのかもしれませんが、「極めて少ない」という印象です。一般にもアキアカネは減ってきていると言われ、今後も激減が予想されているそうです。

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激減の理由は色々考えられますが、明快な理由はなかなか難しいようです。田んぼの「乾田化」や「除草剤の使用」「休耕田の増加」などが考えられますが、アキアカネは「暑さに弱い」ので温暖化とも関係しているかもしれません。


いずれにしても「共生のシンボル種」であるアキアカネは、一定の「環境の指標」にもなります。私たちの主食がお米である以上、田んぼは「日本の環境形成」の上で、重要な位置を占めていると思います。

もちろん田んぼの目的は、「稲作」であって「環境形成」ではない事はよく分かっているのですが、この「稲作」を初めとする農業は、「生産」と同時に「環境デザイン」も行う、「国土デザインの上でも重要な分野」に思えます。それゆえ、この職業(農業)が、現在大変厳しい状況にあるのは残念な気がします。私たちのごく小さな菜園を見ているだけでも、今まで気付かなかった「微妙な環境の差異」に気付くことが多いですから、これが大きな田んぼや畑であれば、それこそ環境への影響は大きいですよね。

センチメンタルにアカトンボの群れを懐かしんでいるわけではなく(多少それもあるか・・・・・)「環境の変化」をアキアカネは語っているわけで、それを私たちは読み取る努力をしたいな、と思っています。それは目に見えにくく、また明快でもありませんが、環境に限らず、建築、インテリア、プロダクトなど、あらゆる分野でデザインする人が持つべき感性のひとつである気がします。特に現代では、そうした「生物の目線」や「環境を読み取る感性」は、「自分とは関係ないもの」「なんとなくダサイもの」として隅に追いやられがちです。また、デザインする側にとっては「インパクトのあるデザイン」に結びつきにくかったりするかもしれません。でも最も「根源的な感覚」であるようにも思います。
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by lidesign | 2008-10-30 16:18 | 環境とデザイン

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by lidesign | 2008-10-06 15:29 | お知らせ